※札幌商工会議所のセミナー講師控室より(右下が札幌時計台です)
おはようございます。
北海道札幌市中央区の税理士 板倉圭吾です。
10月はセミナー登壇が3件あり2件が終了、監査役としての会議出席もありました。
アウトプットとインプットをバランスよく行う、学びの秋です。
人間の判断は不可欠
10月8日に開催された年末調整セミナー。
参加者の集中力が途切れず、最後には大島訴訟判決(給与所得控除の合理性を問う裁判)まで話が広がりました。
私自身も熱量に引っ張られ、講師としてたくさんの刺激を受けた一日でした。
先日の年末調整セミナー。
参加者の熱量がすごくて、最後に大嶋訴訟判決まで触れてしまいました。良いセミナーの機会をいただきました。— 札幌税理士 板倉 圭吾 (@itaxez) October 11, 2025
実はこのセミナー、AI(ChatGPT)と一緒に設計した講義です。
AIを使えば資料作成の時間が劇的に短縮される…というイメージがあるかもしれませんが、実際にはまったく違いました。
ChatGPTは「ストーリーに沿った最短距離の線を引くのが得意だ」というのが結論です。
そこに肉付けをし、受講者が理解しやすい構成へと整えるのは、やはり人の役割だと感じました。
準備の裏側 ―「初心者に全体像を伝える」ことを意識して
今回、特に意識したのは「初めて年末調整を担当する人にも全体像が伝わる」こと。
ChatGPTは私が無意識のうちに「専門家として前提知識にしていた部分」を拾ってくれます。
たとえば「基礎控除」「103万円の壁」といった用語の説明です。
AIの活用で受講者との認識ギャップに気づける瞬間がありました。
逆に、AIが「これは重要」と強調したテーマでも、実務的に枝葉の部分だと感じたところは私の言葉に置き換えて整理。
AIが「広げる」、人が「選ぶ」。
この往復がとても建設的でした。
ビュッフェで食事を選ぶようなイメージです。
「専門家だから選べる。食べ合わせの妙を提案するのはAIには難しい。」まだその段階だと思います。
午前で改正点を終える理由
年末調整セミナーでは「午前だけでも参加してよかった」と思ってもらうために、改正点は午前中に集中して解説するよう構成しています。
「忙しい担当者向けに、改正点を早めに取り上げます」と説明しました。
でも裏の意図もあって、
「午前に集中して学んでいただくことで、午後の理解が確実に深まる」
と思っています。
講師としての経験からも、長時間のセミナーの場合、午前の出来が全体の完成度を高める重要な要素です。
現場での熱気とAIでは届かない領域
当日はfreee社の担当者にもご協力をいただき、人事労務freeeの機能紹介を交えながら講義を進めました。
ちなみに、使ったストーリーレーンのURLはこちら。
参加者からはとても好意的な反応がありました。
最後まで集中力が切れない受講者ばかりで、質問も非常に具体的。
中には、スライドの誤字に気づいて教えてくださる方まで(ありがとうございます)。
その熱気に応えて、スライド準備時点では構想にはなかった大島訴訟判決まで言及しました。
受講者の反応を受けて講義を変えていく「ライブ性」は、人にしかできない仕事です。
AIがくれた発見
AIと資料を作る中で、最も印象的だったのは「知識のギャップの可視化」。経験が浅い参加者にとって、これは理解が難しいかもしれないという箇所の指摘は適切にしてくれました。
ただし、AIが作る文章は理解を深めるストーリー性は薄いかな。最短距離で目的到達する直線のイメージです。
そこに実務家としての経験や判断で肉付けするのが大切だと思います。
今回のセミナーでは有用な壁打ち役でした。
他方で、まだまだ計算も含めた、事案の判断には使えません。
実際に年末調整の各種条件を設定して、チャットGPTに演習してもらいましたが正しい年末調整額は計算できませんでした。
月額200ドル課金AIでも苦手はまだまだあるのです。
セミナーを終えて(次回のご案内)
今回のセミナーでは、主催者のきめ細かいサポートにも改めて感謝しています。
次回は、10月20日に札幌商工会議所で同様のテーマのセミナーを行います。
今回参加できなかった方、もう一度整理したい方はぜひご参加ください。