皆様、ごきげんよう。
北海道札幌市中央区の税理士 板倉圭吾です。
所用で都内に出かけた折、少し時間ができたので、以前から気になっていた新宿末広亭に立ち寄りました。
言わずと知れた寄席の名所であり、東京に現存する数少ない定席寄席のひとつです。
木戸銭を払うという文化体験
入口で「木戸銭」を支払い、館内へ。
あえて「入場料」ではなく「木戸銭」という言葉が使われていることに、伝統芸能としての格式や文化の重みを感じます。
館内に一歩入ると、そこには時間が少しだけ(40年くらい?)巻き戻されたような空気が漂っていました。
建物は歴史を感じさせる佇まいで、天井の造りや掲げられた名前札にも趣があります。
入れ替えなしでゆっくり楽しむ
驚いたところは「入れ替え制ではない」という点です。
私は昼の部の中盤あたりから入場し、夜の部の途中まで腰を落ち着けて鑑賞することができました。
何時間も演芸に浸りながら、まったりとした時間を過ごせるのは、映画館とはまた違った独特の贅沢さがあります。
忘れがたい芸の数々
この日特に印象に残ったのは、活動写真弁士・坂本 頼光(さかもと らいこう)さんによる無声映画の語り芸と、柳亭 小痴楽(りゅうてい こちらく)師匠の落語でした。
頼光先生の語りは、今となっては非常に貴重な芸能である活動写真弁士の真骨頂。
スクリーンに映る無声映画に合わせて場面ごとに語り分け、声色・テンポ・間合いのすべてで観客を作品世界に引き込みます。
目の前で映画が「語られる」体験は、単なる懐古ではなく、芸の力そのものを体感するものでした。クロックコートも、弁士の雰囲気をいっそう引き立てていました。
小痴楽師匠は、登場からたちまち場内を笑いに包み、噺の運びの巧みさと人物描写の妙で、最後まで飽きさせない高座を披露されていました。
数年前にミッドナイト寄席で拝見した「画面の中の小痴楽さん」が、目の前で実際に噺をするのを体験できて、本当に良かったです。
ひとときのつもりが、思いがけず心に残る午後となりました。
また時間を見つけて、立ち寄ります。