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AI時代に大島訴訟を考える<№31>

投稿日:2017年9月28日 更新日:

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おはようございます。札幌市西区のイクメン税理士 板倉圭吾です。

今日は硬い話題を。

先日、宮谷俊胤先生 (福岡大学名誉教授)とお話する機会がありました。

大島訴訟判決(最判昭60.3.27民39.2.247)に関するものです。

大島訴訟とは

私大教授であった大島先生が、昭和39年(すごく前ですよね…)の所得の確定申告をしなかったので、税務署長が決定処分(税額を決めたり、加算税を課したりすること)をしました。これを不服として裁判で争ったのですが、その最高裁判決が出たのが昭和60年です。

大島先生が言いたかったのは、以下の点(ニュアンスをお伝えしたいので、超訳でお届けします)だと理解しています。

  • 個人事業をしている人は必要経費を認めるよね。給与もらっている人も仕事に行くのに経費かかっているから認めてよ。
  • 給与もらっている人だけめっちゃ収入把握されてる気がする。しかもあんまり特別措置とかないし。
  • これって、法の下の平等(憲法14条1項)に違反じゃない?

最高裁はなんて言った?

憲法一四条一項は、すべて国民は法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない旨を明定している。この平等の保障は、憲法の最も基本的な原理の一つであつ て、課税権の行使を含む国のすべての統治行動に及ぶものである。しかしながら、 国民各自には具体的に多くの事実上の差異が存するのであつて、これらの差異を無視して均一の取扱いをすることは、かえつて国民の間に不均衡をもたらすものであり、もとより憲法一四条一項の規定の趣旨とするところではない。すなわち、憲法の右規定は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であつて、国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである

また超訳で(笑)

  • 法の下の平等は課税権にも及びますよ。
  • でも、国民ってひとくくりに言ってもみんな違うよね。
  • 理由なく差別するのは違憲だけど、合理的な理由で区別するのは違憲じゃないよ。

租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の租税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、 極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがつて、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。そうであるとすれば、租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、これを憲法一四条一項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である。

  • 国民の代表には立法の裁量があり、政策判断や専門的判断も必要だから、立法目的から見て区別の仕方が「著しく不合理であることが明らか」なときだけ裁判所が介入します。

給与所得者は、事業所得者等と異なり、自己の計算と危険とにおいて業務を遂行するものではなく、使用者の定めるところに従つて役務を提供し、提供した役務の対価として使用者から受ける給付をもつてその収入とするものであるところ、 右の給付の額はあらかじめ定めるところによりおおむね一定額に確定しており、職 場における勤務上必要な施設、器具、備品等に係る費用のたぐいは使用者において負担するのが通例であり、給与所得者が勤務に関連して費用の支出をする場合であつても、各自の性格その他の主観的事情を反映して支出形態、金額を異にし、収入金額との関連性が間接的かつ不明確とならざるを得ず、必要経費と家事上の経費又はこれに関連する経費との明瞭な区分が困難であるのが一般である。その上、給与所得者はその数が膨大であるため、各自の申告に基づき必要経費の額を個別的に認定して実額控除を行うこと、あるいは概算控除と選択的に右の実額控除を行うこと は、技術的及び量的に相当の困難を招来し、ひいて租税徴収費用の増加を免れず、 税務執行上少なからざる混乱を生ずることが懸念される。また、各自の主観的事情 や立証技術の巧拙によつてかえつて租税負担の不公平をもたらすおそれもなしとしない。旧所得税法が給与所得に係る必要経費につき実額控除を排し、代わりに概算 控除の制度を設けた目的は、給与所得者と事業所得者等との租税負担の均衡に配意しつつ、右のような弊害を防止することにあることが明らかであるところ、租税負 担を国民の間に公平に配分するとともに、租税の徴収を確実・的確かつ効率的に実現することは、租税法の基本原則であるから、右の目的は正当性を有するものというべきである。

  • 給与もらっている人は、個人事業をしている人みたいに請求書出すわけでもなく赤字かぶるわけでもないし、大体給与水準は一定だよね。
  • 仕事道具は普通、会社に揃えてもらうでしょ。それぞれ事情が違うから収入との関連も、家事費との関連も微妙でしょ。
  • 給与もらっている人はたくさんいるから、みんなが実際にかかった経費を確定申告するようになったら税務署大変だし。
  • だから、個人事業をしている人と給与もらっている人の区別には目的があって正当なものだよ。

と、いうものでした。

事案の概要、判示内容の超訳はニュアンスとしてお楽しみください。

宮谷教授とのやりとり 【AI時代の憲法と税】

私)AIが発達したら、給与もらっている人がたくさん税務署行くってよりは、電子申告でデータが送られるだけだから税務署が大変だよっていう理由はおかしくないですか?

宮)そうだね。だからこそ、司法はこの昭和30年代の訴訟や60年の判決で考えるのをやめているわけではないと思うよ。

でも立法裁量をみとめているのだから、立法者が主体的に時代の変化を捉えて合理的な区分や政策を作ってほしいと思っているはずだよ。

私)なるほど、そうなのですね。確かに、税務行政も税務行政の将来像を発表していますよね。

時代の変化とともに違憲審査も変わっていくのですね。

宮)ただ納税者の権利が侵害される局面はこれからもあるから、税理士として税法だけでなく争訟法についても勉強してください。

私)わかりました…

まとめ 【税の世界ではAIはそこまで来ている】

マイナンバーは始まりに過ぎません。マイナポータルでは、カスタマイズ型情報発信も機能に含まれています。

ぼーっとしていると、税理士がやっていることが行政サービスに取って代わられる可能性もあります。

またAIの発達で給与所得者の実額控除が現実的な政策になる可能性だってゼロではありません。

納税者として、ITやAIに興味をもつこと。税理士として、ITやAIに精通していること。が、大事ではないでしょうか。

その視点からは、クラウド会計というアイディアはとても良いと思います。

今日は過去の判例から、また憲法の視点から、考えてみました。

【昨日の1日1新】

大学院時代から10年ほどお世話になっている大御所税理士からお電話(ありがとうございます)

マネーフォワードの勤怠管理システムセミナー申し込み(大きな動きにつながるといいな)

freeeeと電話ミーティング続き

-クラウド会計, 税金について

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